境内のご案内 寳泉寺の歩み お知らせ 供養・墓苑 特別連載
金比羅大権現(こんぴらだいごんげん)

「おっ、太郎くん、いらっしゃい」
「方丈さん、こんにちは」
「今日は、塾かい?」
「うん、これから行くの。あ〜あ、勉強はいやだなあ!」
「そんなこと言わないほうがいいぞ。お母さんに聞こえたら、たいへんだぞ」
「うへっ、それはたいへんだ。気をつけなきゃ。あのね、方丈さん。このお堂、なんで、こんなにたくさんの玉がぶら下がっているの?」
「玉? ああ、数珠のことかい。太郎くん、お祖母ちゃんが、仏壇で手を合わせる時、数珠を持っているだろう? これは、あの数珠と同じだよ」

「えっ?! あれと同じ? すごい大きいね。巨人が使うの?」
「巨人? こりゃいいや! ははは!」
「え〜、笑わないでよ」
「ごめんごめん。そうだな、巨人の数珠とは考えたことも無かったよ」
「うん」
「この数珠をな、引っ張って、ぐるぐる回すと、いいことがあるんだぞ」
「いいこと?」
「まずな左のお堂から、手を合わせて、この赤い珠を目の前に持ってきて、それから、引っ張りながらぐるぐる回す。また赤い珠が目の前に来るまでやるんだ。やってみなさい」
「は〜い」
「それじゃあ、今度は右のお堂。さっきと同じにやってごらん」
「は〜い」
「これで、太郎くんの煩悩が無くなったぞ。遊びたいという気持ちが無くなって、勉強がしたくなったはずだ」
「え〜、なってないよ」
「はははは、なってないか。しょうがないな」
「う〜ん、しょうがないな」
「そうだな、まあ、そのうちに勉強したくなる時期が来るよ。まだ時期じゃないんだな」
「うん、時期じゃない」
「それでな、このお堂なんだけど、左のお堂は閻魔堂(えんまどう)、閻魔さんのお堂なんだよ」

「閻魔さま、知ってるよ。地獄で裁判官みたいなことやっている人だよね」
「ほー、よく知ってるな。それで、右のお堂は金比羅堂(こんぴらどう)、金比羅さんがいらっしゃるんだ」
「こんぴらさん?」
「そう、金比羅さん。もともと、船の航海の安全を守る神さまなんだよ」
「船の神さま?」
「そう、それで、航海というのは、人の人生みたいなものだから、人生の安全を守る神さまでもあるんだ」
「へえ〜」
「金比羅さんは、日本中にこうしたお堂やお宮があるんだけど、香川県に本宮があるんだぞ」
「香川県?」
「そう、讃岐の国。うどんがうまいところだ」
「うどん? そういや、讃岐うどん、よく食べに行くよ」

「そうそう、そのうどん屋さんは、たぶん、もともと金比羅さんの近くの出身だな。そこの金刀比羅宮(ことひらぐう)という神社に、金比羅さんが祀られているんだ」
「香川県の神さまなんだ」
「いやいや、もともとはな、インドのガンジス川に住んでいるワニの神さまなんだぞ」
「インド〜? ワニ〜?」
「インドの昔の言葉で、ワニのことを『クンビーラ』と言うんだ。こんぴら、というのは、そこから来ているんだ」
「すごいすごい、インドのワニの神さま。かっこいい!」
「それが何千年もかけて讃岐の国に来て、ここのお寺にも来たってことだよ」
「そうなんだ」
「そういや、太郎くん、こんな歌知っているかい?『こんぴら船々(ふねふね)、追い手(おいて)に帆(ほ)かけて、シュラシュシュシュ』って」
「う〜ん、知らない」
「聞いたこと無いか。民謡なんだけどな」


大流行した金比羅参り

「民謡なんて、聞かないよ」
「そうだな。讃岐の国の金比羅さんは、江戸時代、お詣りするのが大流行したんだ。それで、讃岐は四国だろう。本州から行くのには、大阪とか岡山から船で瀬戸内海を渡って行かなきゃならないだろう。この歌は、そうした船や港で歌われたんだよ」
「ふ〜ん」
「今度、お祖母ちゃんに歌ってもらいな。歌えるはずだから」
「うん、歌ってもらう」
「そろそろ、塾の時間だろう。ここで道くさしてると、遅刻するぞ」
「は〜い、じゃあ行ってくるね」
「行ってらっしゃい。勉強、がんばれよ」
「はーい。ありがとう方丈さん」
「はい、ありがとう、太郎くん」







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